31-カレ邸 Maison Carre 1956〜1959 A. AALTO / Bazoches-sur-Guyonne (near Paris) France No.1/42


アプローチより
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1955年、一面識もなかったパリの有名な画商ルイス・カレよりアアルトの下に届いた設計依頼の手紙から、カレ邸の計画は始まりました。翌年打ち合わせのためヴェネツィアで落ち合ったワイン好きの二人はすっかり意気投合し、その後カレはマイレア邸にも足を運び大そう気に入り、アアルトに全幅の信頼を寄せて設計を任せたと言われています。パリから約50km西の閑静なバゾッシュ・シュール・グイヨン村にあるこの広大な敷地は、オークの林に囲まれ、周囲にはブドウ畑が展開する小高い丘の上にあります。この住宅の設計に当たり現地を視察したアアルトは「周辺環境との調和」をまず第一に考えています。屋根の勾配や住宅内部にレベル差を設けることによって地形との調和を計り、東側外観に見られるように、芝生に設けられた段の造形によって、住宅を自然の環境に溶け込ませようとしています。門から住宅に至る緩やかな登り勾配、左右に曲がるアプローチの砂利道は、景色の移り変わりを楽しませてくれます。住宅内部は、パブリックスペースとして絵画と彫刻を展示するギャラリー、接客空間としても使われるリビングルームとダイニングルーム、そして図書室が。プライベートスペースとして二つの夫婦寝室と子供室が。サービススペースとしてキッチン、メイド室など、明快に区分されて計画されています。アアルトはカレ邸でも彼特有の「囲われた空間」を実現させています。東側に突きだした浴室と二つの夫婦寝室に囲われたテラス付きの中庭は、浴室から直接出ることが出来、外部からの視線が遮られた夫婦だけのプライベートな「囲われた空間」として計画されています。またカレ邸のために家具調度、照明器具、建具金物など有りとあらゆるものがアアルトの手によってデザインされ、エリッサ・アアルトが現場を担当しました。1959年に行われた盛大な竣工パーティーにはコルビジェの姿も見られたそうです。マイレア邸に次いで十全な設計条件に恵まれた仕事に、見事な答えを出した希有な傑作と言えるでしょう。

後日談。デュフィ、レジェ、ジャコメッティなど近代絵画の名作200点余りが一挙に世に出た、と言う記事が2002年12月「ル・モンド」紙の文化欄を華々しく飾りました。カレの遺品だったのです。「カレ邸が競売にかけられ売却されたという記事が2003 MarchのBRUTUSに出てますよ」と大学院生が研究室に知らせに来てくれました。その後、フィンランドのアアルト財団が何らかの動きをしているようだ、との噂が聞こえてきては居ますが定かではありません。情報をお持ちの方、お知らせ頂けたら幸いです。

★★ ホットニュース ★★
2006.02.28付けフィンランドの新聞ヘルシンギン・サノマット紙の記事によれば、カレ邸の嫁入り先が決まったそうです。詳細は2006.03.01付けの下記の記事をご覧下さい。
フィンランド建築・デザイン雑記帳

ジャーナリズムや一般来訪者をほとんど受け入れなかったカレ邸、マダム・カレやカレのお嬢さんが経営するパリの宝石店に何度も見学の依頼をしたのですが梨の礫。北欧建築デザイン協会理事の沼尻さん⇨フィンランドの模型制作者ヤリ・イェッツォネン氏⇨エリッサ・アアルト⇨マダム・カレというルートでOKが出て、ようやく1993年春、数人で訪れる機会を得ることが出来ました。私事ですが、今は無き両ご婦人と沼尻さんヤリ氏に心から御礼申し上げたいと思います。
by hirayama-susumu | 2005-08-29 08:37 | 31-Maison Carre カレ邸
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