65-Mt Angel 修道院図書館 Mt Angel Abbey Libr. (1965~70) A. AALTO / St. Benedict Oregon USA No.1/64


北東側より見る。修理の為でしょうか、格子が外されています。
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健康上の理由その他で渡米できなかったアアルトの代理として、California 大学出身のアアルト事務所の若い所員 Eric Vartiainen と、彼の師でありMIT時代のアアルトの友人でもある Verno DeMars の主催する事務所が、実施設計から施工管理まで担当したと記されています。経済上の理由から規模の縮小を余儀なくされたり、様々な設計変更など、ヘルシンキと現地のやり取りに多大な時間と労力を費やした様です。『DeMars は「この設計に於いてはVartiainen とDeMars 事務所が全てを取り仕切ったが、天才的なアイディアはアアルトの物であるし、全てヘルシンキの指示に従った作品である」と述べている』とD.Cantyは一冊に纏められた彼の著書 "Lasting Aalto Masterwork The Library at Mount Angel Abbey"において、あえて記述して居るように思えてなりません。またGoran Schldtは「1967年にアアルトが現地を訪れた時には既に工事が始まっており、基本的な計画の弱点に対してアアルトは為す術がなかった」と述べています。
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アアルトがこの図書館の設計依頼を受けたのが1964年、1964.05.09付けで最初のスケッチが描かれています。まさにアアルトのデザインの香りが漂う素晴らしいスケッチです。 Donald Canty 著 "Lasting Aalto Masterwork The Library at Mount Angel Abbey"では2ページも割いてこの図面が載っている一方、最終形の図面はページの片隅に掲載されているにすぎません。もちろんALVAR AALTO Vol.Ⅱ Les Editions d'Architecture Artemis Zurich には最終形のプランが掲載されています。アアルトの研究者 Goran Schldt 著(1994) の "ALVAR AALTO THE COMPRETE CATALOGUE OF ARCHITECTURE, DESIGN AND ART" には何故か中間段階のスケッチが掲載されていると言う具合です。
一見アンバランスに見えるアアルトの Seinajoki, Rovaniemi の図書館やVuokseniska 教会のプランなど、実に美しいバランスの取れた一幅の画として見ることが出来ます。しかしながらこの最終形に見られるプランのバランスの悪さはどうでしょう。とてもアアルトの眼を通った物とは思えないのです。

何十年も気になっていたこの図書館、ポートランドの南約100km バスも鉄道もない辺境の地を訪れる事が出来たのは、図書館理事のVictoria Ertelt さんの計らいと、Portland からの往復、車で送り迎えしてくださった、図書館Cataloger, Bruce Flath 氏のご厚意の御陰だと深く感謝しています。

by hirayama-susumu | 2007-04-03 22:32 | 65-Mt Angel 修道院図書館
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